宗派が分からない方必見!│宗派の簡単な調べ方│分かり易く解説します
- 2019.08.8 | 知識
仏教が広く浸透している日本では、多くの葬式が仏式で行われます。
一言で仏式といっても、故人の宗派によってそれぞれ異なった方法で葬儀が執り行われることをご存知でしょうか。
いざ喪主の立場になったとき、故人の宗派がわからないと、とても困ってしまいます。
いざという時に慌てなくていいよう、故人の宗派の調べ方について詳しく探っていきましょう。
どんな宗派があるの?
まずどんな宗派があるのか押さえておきましょう。
現在、日本の仏教は、次の13の宗派に分かれています。
- 法相宗(ほうそうしゅう)
- 華厳宗(けごんしゅう)
- 律宗(りっしゅう)
- 天台宗(てんだいしゅう)
- 真言宗(しんごんしゅう)
- 融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)
- 浄土宗(じょうどしゅう)
- 浄土真宗(じょうどしんしゅう)
- 時宗(じしゅう)
- 臨済宗(りんざいしゅう)
- 曹洞宗(そうとうしゅう)
- 黄檗宗(おうばくしゅう)
- 日蓮宗(にちれんしゅう)
菩提寺を調べる
宗派を調べる方法として、もっとも手っ取り早いのが菩提寺を調べる方法です。
菩提寺とは、一家が葬式や追善供養を営む寺のことです。
実家に残された連絡先に寺院が記入されていれば、直接電話をして確かめることができます。
しかし故人が既に実家から遠く離れた地で暮らしている場合には、そうした手掛かりもすぐには見つけ出すことはできません。
その場合は、親戚に聞いてみるという方法もあります。
ただし日常的に生活を共にしていない親戚は、往々にして記憶が曖昧なことがあります。
お経を唱える段階になって他の親戚から宗派が違うと言われては大変です。
必ず菩提寺と思われるお寺に連絡をして、しっかりと裏付けを取ったうえで宗派を確定することが重要です。
仏壇から宗派を確認する
故人の住まいに仏壇が存在していれば、その仏壇から宗派を確認できます。
仏壇は先祖崇拝の考えから日本に広まったものであり、寺院の出先機関のような役割を担っています。
そのため寺院ごとに祀っている本尊が異なるように、仏壇の様式も宗派によってそれぞれ異なっているのです。
ただし本尊を最上段の中央に安置して、両脇に宗派の祖師を祀るという形式は共通しているので、ここが宗派を知る大きな手掛かりです。
それぞれの宗派の仏壇にどのような特徴があるのか、みていきましょう。
天台宗
天台宗の本尊は釈迦如来とされています。
しかし天台宗の各寺では釈迦如来以外のいろんな仏が祀られているため、仏壇には菩提寺の本尊が安置されていることがあります。
本尊の両脇は、向かって右に天台大師智頭、左に最澄の絵像が祀られます。
真言宗
真言宗は、大日如来を本尊として安置しています。
向かって右に空海(弘法大師)、左に不動明王の絵像が祀られます。
仏壇が小さい場合は、大日如来か空海を本尊として両脇に位牌を置くことがあります。
仏壇は南向きに置くのが基本とされていますから、どちら向きに設置されているか、方位についても着目しましょう。
浄土宗
浄土宗は阿弥陀如来を本尊として安置しますが、「南無阿弥陀仏」の掛け軸を祀る場合もあります。
両脇には観世音菩薩と勢至菩薩が祀られています。さらにその脇に法然と善導の絵像を飾ることもあります。
浄土真宗
浄土真宗の特徴は、位牌も遺影も置かないということです。
本尊は阿弥陀如来の絵像か「南無阿弥陀仏」の掛け軸を祀ります。
阿弥陀如来の後光が上段枠に到達している本数によってそれぞれの派の区別ができます。
6本の場合は「大谷派」で、8本だと「本願寺派」です。
本尊の両脇は向かって右に「帰命尽十方無碍光如来」の掛け軸か親鸞の絵像、左に「南無不可思議光如来」の掛け軸か蓮如の絵像を掲げています。
また大谷派では、亀の上に鶴が乗った鶴亀燭台を用いるという特徴があります。
臨済宗
臨済宗は本尊を定めていません。
多くは釈迦如来が置かれていますが、薬師如来や大日如来を祀ることもあります。
向かって右に道元、左に瑩山の掛け軸を祀ります。
曹洞宗
曹洞宗の本尊は釈迦如来ですが、観音菩薩や地蔵菩薩が安置されていることもあります。
向かって右に道元、左に瑩山の掛け軸を祀ります。
ただしこの三尊仏をひとつにまとめて描いた掛け軸を配することもあります。
日蓮宗
日蓮宗では、中央に「南無妙法蓮華経」の題目、向かって右に鬼子母神、左に大黒天の絵像が祀られるのが一般的ですが、地方によっては配置が異なることもあります。
さらにその手前に日蓮の坐像を安置します。
お墓から宗派を確認する
お墓は宗派によって異なった形式になるため、宗派を知る手掛かりになることがあります。
それぞれどのような特徴があるのか、宗派別にみていきましょう。
天台宗
天台宗のお墓は宗派としての決まりがないので、自由な発想で建てられたお墓が有るのが特徴です。
墓石に刻む文字にも決まりはありませんが、五輪塔を建てる場合、上から「妙・法・蓮・華・経」の五字を刻むことがあります。
真言宗
真言宗のお墓では、竿石と呼ばれる直方体の墓石の正面部分に「○○家之墓」といった一般的な表現の他に、「南無大師遍照金剛」という文字を彫ることがあります。
戒名では「光」「蓮」「泉」「明」「照」「真」の文字が多く用いられます。
浄土宗
浄土宗のお墓は、竿石正面部分に「○○家之墓」といった一般的な表現のものの他に、「南無阿弥陀佛」や「倶会一処」と彫ることがあります。
戒名に「誉」の文字を用いることがあります。
浄土真宗
浄土真宗のお墓は、竿石正面部分に「南無阿弥陀仏」や「倶会一処」といった文字が彫られます。
また卒塔婆を用いない点にも特徴があります。
浄土真宗では戒名とは言わず法名と呼んでいます。
法名には、男性は「釋」という文字が、女性は「釋尼」という文字が用いられます。
また他の宗派で用いられる「居士」「信士」といった戒名の後ろに付ける「位号」がないのも大きな特徴です。
臨済宗・曹洞宗
禅宗系の臨済宗と曹洞宗のお墓は、竿石正面部分に「南無釈迦牟尼仏」と彫られているか、「○○家之墓」の上部に「円相」と呼ばれる円のようなものが刻まれることがあります。
戒名では、最後に「霊位」という文字をつけています。
日蓮宗
日蓮宗のお墓は、竿石正面部分に「南無妙法蓮華経」か「妙法」という文字が髭題目(ひげだいもく)と呼ばれる独特の字体で刻まれている点に特徴があります。
五輪塔を建てる場合は、上から順に「妙・法・蓮・華・経」または「南無・妙・法・蓮華・経」と髭題目の字体で刻みます。
日蓮宗では戒名とは言わず法号と呼びます。
法号には、男性は「日」か「法」、女性は「日」か「妙」の文字が用いられます。
まとめ
ここまで故人の宗派が分からない場合の調べ方について説明をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回説明した以外にも、位牌の素材や戒名の上部に使用する梵語が宗派によって異なります。
ただ、これらはいくつもの宗派で重複しているために、慣れない人にとっては、それを手掛かりにして宗派を特定することは困難です。
宗派は、仏壇に祀られた本尊と祖師を調べることで、かなり絞られてきます。
また墓石や先祖の戒名にも宗派の痕跡が残されていることもありますから、宗派が不明なときは、それぞれのポイントを丹念に調べていきましょう。
最も確実な方法は菩提寺に確認する方法ですが、個人情報保護の観点から、突然電話一本で問い合わせをしても教えてもらえないことがあります。
いざというときに慌てないためにも、家族が健康に過ごせている平時にこそ、両親や祖父母などから、自分の家の宗派と菩提寺を確認しておくことが何よりも重要です。