墓地埋葬法の内容とは?法の概要から埋葬や改葬の手続きまで詳しく解説
- 2025.03.13 | 知識
故人のご遺骨を埋葬する際、どのような手続きを踏めばよいのか分からないケースもあるのではないでしょうか。故人を埋葬する場合、基本的には業者に依頼することになります。しかし、手続きについての知識がないまま業者に任せきりにするのは適切ではありません。
墓地埋葬法に定められた基本的な規則や罰則規定について理解しておくことで、安心して故人を見送ることができます。
本記事では、これから故人のご遺骨を埋葬・火葬する方に向けて、墓地埋葬法の概要と、法律に基づく埋葬・改葬の手続き、お墓を建てるときのポイントなどを詳しく解説します。
墓地埋葬法の概要
正しい手続きに従って故人を埋葬するためには、墓地埋葬法について理解しておくことが大切です。
多くの場合、故人の葬儀や埋葬を執り行う際、業者に依頼することになります。しかし、手続きや申請手順などの法律に基づく知識を持っていることで、ご納得の上で見送ることができるでしょう。
ここでは、墓地埋葬法の成り立ちや目的、規則などを解説します。
墓地埋葬法とは
墓地埋葬法は、墓地や納骨堂、火葬場の運用管理について定めた法律です。1948年に制定され、正式には「墓地、埋葬等に関する法律」といいます。墓地埋葬法では、主に墓地や埋葬に関する用語の意味やルール、管理・経営者の義務、罰則規定について定めています。
まずこの法律の目的については、墓地などの管理運営が国民の宗教的感情に合うものであり、公衆衛生や公共の福祉の観点から問題なく行えることと定められています。埋葬や火葬を行う方、及び管理・経営者に対し、ご遺骨を円滑に埋葬するための基本的なルールを定めた法律といえます。
墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。
引用元:墓地、埋葬等に関する法律
墓地埋葬法の制定以前は、各地域のルールに基づき埋葬・火葬が行われていました。しかし、法律の制定により統一的なルールが加わり、都道府県ごとの基準に基づいて執り行われるようになりました。
そして、墓地埋葬法は2011年に改正され新たな規定が追加されています。経営許可や立ち入りに関して都道府県知事から市町村長に権限が移行したことが改正の大きなポイントです。
このように、墓地埋葬法は今後の墓地開発に大きな影響を与える重要な法律といえます。故人の埋葬・火葬を業者に依頼する場合は、法律に基づくルールをよく確認しておくことが大切です。
墓地・埋葬に関する基本用語
墓地埋葬法に規定されている基本的な用語について、条文を抜粋してご紹介します。
- 埋葬:死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ること
- 火葬:死体を葬るために、これを焼くこと
- 改葬:埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと
- 墳墓:死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設
- 墓地:墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域
- 納骨堂:他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設
- 火葬場:火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設
引用元:墓地、埋葬等に関する法律
墓地埋葬法では、ご遺体またはご遺骨を納める施設は、「墳墓」と「納骨堂」であると定められています。墳墓とは、亡骸を埋葬したり、焼骨を埋蔵したりするお墓のことです。
なお、「埋蔵」とは焼骨の葬送方法のこと、「収蔵」とはお墓や納骨堂にご遺骨を納めることを指すといわれます。
墓地・埋葬についてのルール
墓地埋葬法には、埋葬や火葬を行う人に向けてさまざまな規則が定められています。
まず、埋葬や火葬、または改葬をするためには、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長の許可が必要です。埋葬許可証、改葬許可証または火葬許可証の交付を受ける必要があります。
そして、火葬や埋葬を執り行うのは、原則として死亡・死産後24時間が経過していなければなりません。ただし、妊娠6ヵ月以内の場合は例外です。
葬儀をしてくれる人がいない場合は、死亡地の市町村長が実施します。
また、管理・経営に関する規則には、墓地や火葬場を運営する際には都道府県知事の許可が必要だと定められています。墓地の管理者は、埋葬許可証、改葬許可証または火葬許可証が受理されてからでなければ埋蔵できません。
罰則規定も確認しておくことが大切
墓地埋葬法に違反した場合の罰則規定についても確認しましょう。
以下の内容に関する規則に違反した場合は、6ヵ月以下の懲役または5千円以下の罰金が科せられることがあります。
- 都道府県知事の許可なく墓地や納骨堂、火葬場を経営した場合
- 公衆衛生、その他公共の福祉の観点から必要があると認められた場合に都道府県知事によって命じられる、施設の整備改善や使用制限、停止命令に違反した場合
その他にも、主に以下の内容に関する規則に違反した場合は、千円以下の罰金または拘留、科料に処せられることがあります。
- 死亡後24時間が経過しなければ埋葬・火葬してはいけない
- 墓地以外の区域に埋葬または焼骨の埋蔵をしてはいけない
- 埋葬、火葬または改葬する場合は、市町村長の許可を受けなければならない
法律に基づく埋葬や改葬の手続き
前述のとおり、墓地埋葬法には、埋葬・火葬に関する基本的なルールが定められています。この墓地埋葬法に基づき、具体的な運用について定められているのが、施行規則です。
法律に則って適切に埋葬・改葬を行うためにも、ここでは墓地埋葬法や施行規則に基づく手続きについて解説します。
一般的な埋葬や改葬の手続き
一般的な埋葬と改葬の手続きに必要な書類について解説します。
埋葬手続きに必要な書類
埋葬の手続きに必要な書類は、主に以下の通りです。
- 「死亡診断書」または「死体検案書」
- 死亡後7日以内に市区町村へ提出する「死亡届」
- 死亡届提出後に役所から交付される「火葬許可証」(火葬が完了し、火葬場で証明印を受けると「埋葬許可証」に変更されます。)
改葬手続きに必要な書類
改葬に必要な書類を確認しましょう。以下の2種類の書類が揃ったら、改葬許可申請書を作成して、現在埋葬されている区域を管轄する役所で改葬許可書を受け取ります。
- 移転先の改葬受入承諾書:移転先が決まったら移転先の墓地経営者に発行してもらう。ただし、海洋散骨の場合には不要
- 埋葬・納骨の事実を証する墓地又は納骨堂の管理者の証明書(納骨証明書):現在遺骨を納めているお寺や霊園から発行してもらう
無縁墓の改葬にも一定の手続きが必要
少子高齢化が進む近年では、無縁墓が増加しているようです。
死亡者の縁故者がいない場合の埋葬、または埋蔵、焼骨の改葬については、施行規則に定められています。
無縁墓の改葬に必要な書類は以下のとおりです。
- 無縁墳墓等の写真および位置図
- 官報に、死者の縁故者が存在しない旨(権利者からの申し出を促す内容)を掲載。さらに見やすい場所にその旨を掲示した立札を1年間設置。期間中に申し出がなかったことを証明する書面
- 官報の写しと立札の写真
- そのほか市町村長が必要と認める書類
一般的に、無縁墓の撤去や改葬作業については市区町村が負担します。自治体や周囲の方への負担を軽減するためにも、無縁墓の増加を防ぐ取り組みが重要です。
お墓を建てる前に知っておきたいこと
ここまで、墓地埋葬法に基づく、墓地の管理運営のルールについて解説してきました。これからお墓を建ててご遺骨を埋葬する方は、法律の規則を遵守したうえでいくつかポイントをおさえておく必要があります。
ここでは、お墓を建てる前に知っておきたいポイントについて解説します。
「散骨」は節度を持って行うことが大切
最近では、ご遺骨の埋葬方法についての選択肢が広がり、山や海などへの散骨を希望する人が増えています。
散骨は新しい埋葬方法として人気が高まっているものの、墓地埋葬法に規定されていません。ちなみに、一般的に遺骨を粉状にして撒く行為は「埋蔵」には該当しないと解釈されています。そのため、「墓地以外の区域」に「埋蔵」してはいけないという規定に違反するとは考えられていません。
ただし、散骨に対する条例の規制は地域によって異なります。事前に、希望する地域の条例を確認し、その内容に沿って節度を持って行うことが大切です。
墓地や霊園の利用規則を遵守する
法律だけでなく、墓地や霊園などの利用規則を確認することも大切です。
利用規則の内容は墓地や霊園によって異なりますが、主に以下のような内容が定められています。
• 使用者の資格
• 使用目的
• 墓石・設備の設置基準
• 管理料・墓地使用料
• 埋葬・改葬の手続き
• 使用を取り消す場合の規定
また、寺院の場合は、宗旨・宗派や門徒条件などが含まれている場合もあります。
生活保護受給者には「葬祭扶助」がある
葬儀を執り行うためには、費用が必要です。さまざまな理由により就労が困難で、生活が困窮している状況にある生活保護受給者には、生活保護法に規定される「葬祭扶助制度」があります。これは、自治体が生活保護受給者など経済的に困窮している人に対して最低限の葬儀を行うための費用を支給する制度です。
一般的に、支給される費用は火葬のみで行われる簡易な葬儀(「直葬」)が前提となっており、自治体により金額は異なりますが、15万円~20万円程度が目安となっています。
なお、葬祭扶助を受けるためには、市町村役場や福祉事務局で所定の手続きを行う必要があります。
消費者保護の観点から建墓契約が無効となる場合もある
お墓を建てる際、霊園や墓地、石材店などと建墓契約を結ぶことになります。しかし、契約内容によっては業者側に有利な一方的な条件が盛り込まれている場合があります。契約書の内容は必ず確認し、不明点があれば専門家に相談するなどして、納得の上で締結することを推奨します。
なお、著しく不公平だと解釈される契約条項については、消費者契約法に抵触する恐れがあり、場合によっては裁判上無効とされる可能性があります。
建墓契約の際に提示される主な書類は以下の通りです。
• 工事契約書
• 注文内訳書
• 彫刻指示書
• 振込用紙
まとめ
本記事では、墓地埋葬法の概要や規則について解説しました。大切な人を失った後は、深い悲しみと戸惑いの中で葬儀や埋葬の手配を急がなければならない状況に多くの方が直面します。しかし、すべてを業者に委ねる前に、墓地埋葬法に定められた埋葬・火葬の基本ルールを理解しておくことで、後々の不安を軽減し、落ち着いて故人を見送ることにつながります。
また、これから墓地を探す方にとっては、霊園や墓地の立地条件や費用だけでなく、その運営・管理体制にも注目して、適切な場所を選ぶことが重要です。
さらに、葬儀や埋葬には相応の費用がかかるため、急な出費に慌てないよう、事前に霊園、墓地、石材店などに費用を確認し、計画的に準備を進めることをおすすめします。
健康保険、国民健康保険、国民年金などに加入している場合、自治体や健康保険組合によっては「葬祭費」や「埋葬料」、「死亡一時金」といった補助金を受給できるケースもありますので、こちらも早めの確認が安心につながります。
私たちコトナラは、九州で14,780件を超えるお墓に関する実績をもとに、霊園や墓地、石材店の紹介を行っています。お墓に関するお悩みやご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。