海洋散骨・海洋葬は法律的に大丈夫?|マナー・注意点・参考価格
- 2019.12.2 | 知識
近年の終活ブームにともない、自分らしさを追求した葬送を選ぶ方が増えています。
様々な葬送方法がある中で、海洋散骨や海洋葬という言葉をご存知でしょうか。
聞いたことはあっても、どのような手順・方法で故人を送り出すのか分からない方がほとんどだと思います。
そこで今回は、海洋散骨・海洋葬の流れや注意点など詳しくご紹介します。
海洋散骨って?
海洋散骨とは、故人のご遺灰を海に還す葬送です。
海洋散骨、海洋葬、海の葬儀などとも呼ばれます。
船舶から海へとご遺灰を撒き散骨をすることで、自然の循環の中に回帰したいという自然志向の方々の願いを叶える自然葬として注目されています。
大自然に還れるというロマンや、後継者に負担を掛けたくないとの思いから、終活の中で生前に希望される方が多いようです。
海洋散骨が選ばれるようになった背景には核家族化や後継者不足があることから、現代社会に合った葬送方法といえるでしょう。
散骨方法の種類
海洋散骨の種類としては大まかに3種類に分けることができます。
業者によってどのようなプランがあるかは異なりますので、検討する際は確認するようにしましょう。
個人散骨
船舶をチャーターし、遺族の手で散骨する方法です。
家族や親族のみで乗船するため、生前好きだった音楽を流すなど、故人や自分たちの希望に沿ったかたちで行うことができます。
ただし業者によってできることが異なるため、事前の確認は必要です。
船を貸し切るため、周囲に気を遣う必要がない点が大きなメリットといえるでしょう。
料金は合同散骨や代行散骨に比べて高い傾向にあります。
また、乗船する人数によって船の大きさが変わり、金額も変動します。
一般的な利用料金:20万~ ※参考価格
合同散骨
他のグループなどと船舶に乗り合わせて散骨する方法です。
料金が個人散骨より安価な場合が多いため、予算とのバランスを考えて選ばれる傾向にあります。
乗船するのが自分たちだけではないため、特に親族の理解が必要です。
事前に合同散骨であることを説明し、必ず了承を得ておきましょう。
一般的な利用料金:10万~ ※参考価格
代行散骨
遺族が立ち会えない場合、ご遺骨を預かった業者が代行して散骨を行う方法です。
委託散骨とも呼ばれます。
遠方で行けない方などに選ばれている方法です。
基本的に業者に任せることになりますが、費用をもっとも抑えることができます。
中には散骨の様子を写真に収めて送ってもらえる業者もあります。
どのようなサービスを行ってもらえるのか、相談してみるのも良いでしょう。
一般的な利用料金:5万前後 ※参考価格
1霊分ごとに追加料金が設定されている場合が多いため、必ず事前に確認しておきましょう。
法律的に大丈夫?
海にご遺骨を撒くと聞いて、法律のことを心配する方もいると思います。
結論から言うと、現時点で散骨は法律違反にはなりません。
積極的に推奨されてはいませんが、法に反することなく実施できる場合がほとんどです。
散骨は近年のニーズに合わせて登場した新しい葬送スタイルであるため、整備する法律が現時点で存在しません。
埋葬についての法律が作られた段階では、散骨は想定されていない葬送方法でした。
そのため、合法とも違法ともいえないグレーゾーンといえるでしょう。
今後、法が整備されることで明確に散骨についての法律ができる可能性も考えられます。
一部では、散骨に対して独自の条例で制限を設けている地方自治体もあります。
海洋散骨を考えている場合は、条例で制限された地域かどうか調査したうえで、問題がなければ依頼しましょう。
全国的には散骨を禁止している自治体は少数で、九州地方の自治体でも現時点で禁止されている地域はありません。
節度をもっておこなえば法的には問題はないというのが現在の見解です。
海洋散骨を行うにあたり、この『節度』という点が重要視されます。
節度をもって行わないと、法律的に問題があるとみなされるからです。
一般社団法人日本海洋散骨協会が定めた「海洋散骨ガイドライン」を参考にすると良いでしょう。
ご遺骨を2mm以内の粉末状にする
ご遺骨を海に撒くにあたって、粉末状にする必要があります。
これは法律で明確に定められており、違反すると「死体損壊・遺棄罪」に該当し、法律違反となるだけではなく刑罰が課せられる可能性があります。
そのため、散骨するためには骨とわからない状態(1~2mm以下)にする必要があるのです。
注意すべき点
海洋散骨に資格は必要ないため、個人でも行おうと思えば可能です。
ですが明確なルールが定められていない分、マナーや常識として気をつけなければならない点があります。
船舶を出すにも航路法を遵守する必要があり、散骨に慣れている散骨業者に依頼することが望ましいでしょう。
海岸ではなく沖で散骨する
海岸は生活区域であり、生活を営んでいる人々がいます。
海水浴をする場所でもあり、住民や観光客へ不快感を与えないようにするため、海岸付近での散骨は避けましょう。
基本的には1海里以上離れた沖で散骨します。
漁業場や養殖場の近くも避ける
海上だったらどこでもいいというわけではありません。
漁業や養殖などを行っている場所の近くでは散骨を控えるのがマナーです。
他の方の心情に配慮した散骨を行いましょう。
他の船舶の航路を妨げない
海上は漁業船から遊覧船、フェリーなどさまざまな船舶が通ります。
そのため、他の船舶の航路の邪魔にならないよう配慮する必要があります。
自然に還るもののみ撒く
海洋散骨において、お酒や花びらを船舶から海に向かってお供えします。
花を持参する場合は包みをあらかじめはがしておき、花びらだけを撒くようにしましょう。
ビニールやプラスチックなど、自然に還らないものは海に流してはいけません。
環境汚染は世界的問題になっており、環境への配慮が求められています。
河川や湖での散骨は控える
河川や湖は普段生活で使用する水道水の水源です。水道水は飲み水や料理用の水としても用いられます。
そこで散骨を行うことは、一般市民の感情を著しく害することに繋がります。
生活する人の心情に添い、マナーを守った散骨を行うことが大切です。
喪服は原則着用しない
ご遺族の方の中には喪服で故人を送り出したいと思われる方もいることでしょう。
しかし、桟橋は公共の場で一般の方が足を運ぶため、喪服の着用はふさわしくありません。
海洋散骨では周囲への配慮から平服を推奨されています。
派手な色は避け、落ち着いた色の服を着用しましょう。
また、船上は揺れて足元が安定せず、非常に危険です。
高めのヒールなど普段着慣れていない靴の着用は控えたほうが良いでしょう。
まとめ
以上、海洋散骨についてご紹介しましたがいかがだったでしょうか。
近年広まりつつある葬送で、中でも海に関係する職種の方や海が好きな方が希望される傾向にあるようです。
明確なルールが定められておらず、良識やマナーが問われる葬送スタイルでもあります。
トラブルを防ぐため、不慣れな状態で個人が行うより経験豊富で海洋散骨に詳しい業者に依頼しましょう。
なによりも家族や親族とよく話し合い、了承を得たうえで検討されることをおすすめします。