菊の種類|お供えに選ばれる理由とは?
- 2020.04.20 | 知識
日本の代表的な花のひとつに、菊があげられます。
お墓参りの際にも見かけることが多い菊ですが、どうして菊がお墓やお仏壇に供えられるようになったのでしょうか。
菊とはどういう花なのか、どうして仏花に菊が選ばれるのか。
今回は菊について見ていきます。
菊について
菊は、キク科キク属の植物です。
日本で発展した品種群を和菊、ヨーロッパで生まれた品種群を洋菊といいます。
さらにそれぞれ大菊と中菊、小菊、スプレー菊などに分けられます。
日本の秋を代表する花として古くから親しまれ、美と文化の象徴として、日本人の在り方をあらわす花といわれてきました。
思いやりや慎みの心を表すともされ、日本人の気風に合っている花といえるでしょう。
菊は供花や献花としてもよく選ばれ、お墓参りや葬儀など供養の花として用いるのは日本に限りません。
中国や韓国、ヨーロッパ諸国の一部など世界各地でみることができます。
伝統ある菊
菊は桜とならび、実質上の国花のひとつとして広く親しまれています。
法律で国花に指定されてはいませんが、慣習として菊は国花という扱いを受けています。
菊花紋章として用いられるなど、菊には伝統があります。
また、鎌倉時代の後鳥羽上皇が菊を好んだことから自らの印として愛用し、以降は皇室を象徴する花となりました。
パスポートの表紙にも使われていることから、馴染み深く感じる方も多いのではないでしょうか。
菊の種類
菊は日本のみならずヨーロッパにも流通し、世界各地で品種改良が盛んに行われてきました。
そのため、非常に多くの種類が存在します。
大菊
大菊は摘蕾するのが一般的です。
これには、余分な養分の浪費を防ぐという狙いがあります。
厚物
厚物はさらに細分化され、厚物、厚走り、大掴みに区分されます。
厚物
多数の花びらが中心に向かってこんもりと盛り上がったものを指します。
花びらに起伏がなく、整然と並んだものが良いとされています。
厚走り
厚物の花びらの下に、長い花びらが走るように垂れていることから厚走りと名づけられました。
郡山の雪や雪山などが代表としてあげられます。
大掴み
花の上部が手でつかんだことに見えることから大掴みと名づけられました。
走弁が下部につくのが特徴です。
別名を奥州菊、八戸菊花といいます。これらの別名は青森県の八戸地方で栽培されたことから名づけられました。
管物
管状の花びらを管弁(くだべん)といいます。
花芯から直線的な管弁が放射状に伸び、花びらの多くが管弁となるものを管物(くだもの)と呼んでいます。
花芯のほうへ近づくにつれて管弁の弁端が丸くなり玉巻となります。
下部の花びらは走弁となって、四方へ長く伸びるのが特徴です。
管弁の太さによって、太管、間管、細管、針管、長垂など区分されています。
太管
管物のうち、巻弁がもっとも太く、弁質に力があるものを太管といいます。
花色は多数あります。
間管
漢字が指す通り、太管と細管の中間の太さのものを間管といいます。
間管の管弁の先はすべて玉巻となり、総玉と呼ばれる種類も間管に含まれます。
細管
間管よりも管弁が細いため、花びらが自然と垂れるのが特徴です。
一般的に菊を支える輪台を用います。
別名を糸管といいます。
針管
針のように細い管弁が放射状に咲くのが特徴です。
玉巻をしないことが特徴でしたが、昭和初期に日本国内で品種改良されたことから、玉巻する種も存在するようになりました。
長垂
別名、長管と呼ばれます。
走弁が玉巻して長く垂下することが特徴です。
広物
広物には一文字菊と美濃菊があります。
一文字菊
別名を御紋章菊といいます。
名が指す通り、皇室の菊の御紋のように平たい花びらがひとえに並ぶのが特徴です。
花びらの数は14~16枚ほどで、中でも16枚が理想とされています。
白・黄・紫・紅など多くの色が存在することも特徴のひとつです。
美濃菊
美濃地方でつくられたことから美濃菊と名づけられました。
別名を岐阜菊ともいいますが、これは美濃地方が現在の岐阜県南部に位置することが由来しています。
幅広の平弁が特徴で、花びらは中心部に向かって抱え込むように咲きます。
昭和初期頃から日本全国へと広まりました。
中菊
一般的にお墓参りやお仏壇にお供えする仏花としての菊が含まれます。
洋菊(ポットマム)や古典菊も中菊に区分されています。
中菊は摘蕾するケースがほとんどです。
小菊
花の直径が1cm~3cm程度の菊は小菊に区分されます。
大菊とは異なり、小菊の場合は摘蕾しません。
スプレー菊
花の直径が6cm~3cm程度の菊で、スプレー菊も小菊同様に摘蕾しません。
スプレーとは先が分かれた枝という意味を持ち、小枝の先に多数の花をつけます。
仏花などの用途で供給されています。
クッションマム
ポットマムともいい、いわゆる西洋菊です。
矮化剤を用いることで成長が抑制されており、綺麗に背丈が揃うよう整えられています。
お供えに菊が選ばれる理由
お墓参りに行く際、花屋で売ってある仏花の中には菊が含まれていることが多いことにお気づきでしょうか。
菊が選ばれる理由はいくつかあります。
日持ちする
菊は長持ちするため、お墓へのお供えに適しているといわれています。
お供えした花がすぐに枯れてしまっては物悲しくなり、景観としてもよくありません。
また、本来は秋に咲く菊ですが、電照栽培によって通年市場に流通するようになりました。
お墓参りに行こうと思ったときにいつでも入手できることも好まれる理由のひとつです。
収穫時期を人工的に変動させることを目的とし、本来秋に開花する菊を電照栽培することで冬に咲かせ、お正月に向けて出荷されます。
主に菊や苺の栽培で用いられている栽培方法です。
菊をより長持ちさせるためには、切り花にすると良いでしょう。
水もこまめに変え、常に清潔な状態を保つことでより長い間花を咲かせます。
縁起が良い
菊は古代中国の陰陽思想で、非常に縁起の良い花といわれています。
中国において、物事は陽と陰の2つに分けられるという考え方があり、奇数は陽、偶数は陰に振り分けられます。
その陽がもっとも大きい値が9であり、9が重なる9月9日を重陽の節句(菊の節句)といいます。
陽の極数が重なる日は陽の気が強すぎて不吉とされており、その季節に最盛期を迎える植物のエネルギーを取り入れることで邪気を払ったそうです。
菊は重陽の節句の時期に満開を迎えることから、香りが邪気を祓い、長寿をもたらす花として広く親しまれるようになりました。
枯れた際に散らかりづらい
お墓参りでお花を供える際、気に掛かることとして多くあげられるのが枯れた後のことです。
お墓に供えた花が枯れてしまい、周囲のお墓に迷惑を掛けていないかと心配に思う方が多くいます。
菊は枯れたとしても散らかりづらく、安心して供えられため、お墓に供える花として好まれているようです。
だからといって、供えた花をそのまま放置していいわけではありません。
枯れる前に新しい花と交換することが望ましいため、定期的にお墓参りをすることを心がけましょう。
まとめ
菊についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
お墓参りの際やお仏壇に供える際など、菊を手に取る機会は多いものです。
菊は枯れづらいといった実用的な面だけではなく、観賞用としても長い間親しまれてきました。
実にさまざまな種類があり、地域によっては秋になると菊花展などが催され賑わいます。
九州でいえば現在の熊本県菊池市近辺で育てられていた肥後菊が有名です。
古くから人々に愛されてきた歴史ある菊を、時にじっくりと眺めてみてはいかがでしょうか。