神道の葬儀について|神式の流れやマナーをご紹介します
- 2019.11.15 | 知識
人が亡くなったとき、多くの場合はお葬式が執り行われます。
一般葬はじめ家族葬や直葬など選ばれる葬儀の形態はさまざまですが、慣習としてお葬式を行う場合がほとんどだと思います。
多くの方は仏式のお葬式を行いますが、中には神道のお葬式に参列したことがあるという方もいるでしょう。
神道のお葬式に参列したことがない方も、今後、参列する機会があるかもしれません。
そのときに困ることがないよう、神式のお葬式について知っておきましょう。
そこで今回は、神道におけるお葬式の流れやマナーをご紹介します。
神道とは
神道は特定の教祖や教えを持たない八百万の神(やおよろずのかみ)を信仰する日本発祥の民族宗教のことで、教典などは存在しません。
万物に神が宿るという考え方を持ち、八百万の神を信仰する多神教です。
自然や物、偉人などさまざまなものを神として祀ります。
神道では人が亡くなると幽世(かくりよ)に行き、子孫を見守る守護神となります。
仏教でいう極楽浄土や、キリスト教でいう天国に行くという考え方はしません。
人は神によりこの世に生まれ、神の子としてこの世での役割を終えると神の住む世界へ帰り、子孫たちを見守るものとなるというのが神道の考え方です。
神道には『人間も自然も辿っていくとすべての神々に通ずる』という考えがあり、一族の始祖のことを氏神として、故人を含めた祖先を守護神として祀ります。
神道における「死」の概念
神道において、死は穢れとされています。
そのため、神の聖域である神社で葬儀を行うことは穢れを持ち込むこととされ、古くから忌避されてきました。
お葬式を神社で行うことがないのはそのためです。
神社にお墓がないことや、仏教・神道問わず忌中は初詣を含め神社の鳥居をくぐることを避けるというならわしも、神道の死生観が元となっています。
神道におけるお葬式は神葬祭と呼ばれ、斎場もしくは家で行われるケースがほとんどです。
神葬祭は故人を守護神とするための儀式であり、死によって穢れた生活をお葬式で清め、また日常に戻す意味合いを持ちます。
神道のお葬式の流れ
神道のお葬式についてご紹介します。
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神道のお葬式の流れ : 納棺まで最初に故人のご臨終が確認されたら、病院で亡くなった場合は霊安室に安置されます。
その後ご遺体を搬送するため葬儀社に依頼をし、同時にお葬式の日程を決めます。
帰幽奉告故人が亡くなったあと、神棚と祖霊舎に故人の死を奉告します。
奉告したら神棚と祖霊舎の扉を閉じ、白い半紙を貼ります。
死を穢れとみなす神道において、神棚や祖霊舎に穢れが及ばないようにするためです。
これを神棚封じといいます。
神道では、人が亡くなったことを帰幽と言います。
幽世に帰るという意味を持ち、仏教用語でいう他界や逝去にあたります。
枕直しの儀ご遺体に白の小袖を着せ、白地の布団に北枕にして寝かせます。
近年では故人が気に入っていた服を着せ、白い小袖を掛けることもあるようです。
枕元に白無地の逆さ屏風を立て、祭壇を設けます。
このとき逆さ屏風にするのは、人の死が非日常であることのあらわれです。
仏教における枕飾りのように、お酒や水、米、故人が好きだった食べ物などを供えます。
両側に榊の枝葉をお供えします。
守り刀がある場合はお盆に乗せます。
このとき、刃をご遺体に向けないよう注意します。
納棺の儀ご遺体を棺に納めた後、白い布で覆います。
納棺を済ませたら、出棺までの間は朝と夕の1日2回、お米や水などのお供え物を新しくします。
喪主と遺族で二礼二拍手一礼の拝礼を行います。 -
神道のお葬式の流れ : 通夜祭1日目の流れ神葬祭の1日目では通夜祭と遷霊祭を行います。
仏式でいうお通夜のことを、神式では通夜祭といいます。
通夜祭は儀式を司る斎主をはじめ参列者全員が手水の儀を行い、身を清めてから始まります。
手水の儀(ちょうずのぎ)水の入った手桶(御神水)が入り口に用意されています。
手水の儀では、ひしゃくで水をすくい、左手、右手と順番に清め、左手に水を受けて口をすすぎます。
途中で水をすくいなおすことはせず、最初にすくった水を3回に分けて使います。
最後に懐紙で手を拭き、手水の儀は終了です。
祭司奏上斎主が祭司を唱えます。
斎主とは祭祀を主宰する人を指し、神式のお葬式では、斎主が中心になって行います。
仏式の葬儀でいう僧侶、キリスト教の牧師にあたる存在です。
玉串奉奠(たまぐしほうてん)斎主が祭司を唱え終わったら、玉串奉奠を行います。
玉串奉奠では、榊の枝に紙をつけた玉串を祭壇に捧げます。
このときにつける紙は紙垂と呼ばれます。
まず最初に斎主が玉串を捧げ、続いて喪主、遺族、親族の順に捧げます。
玉串を捧げたら忍び手にて二礼二拍手一礼を行います。
忍び手とは音を出さずに行う拍手のことです。 -
神道のお葬式の流れ : 遷霊祭遷霊祭通夜祭が終わると、遷霊祭(せんれいさい)が始まります。
別名を御霊移しといい、故人の御霊をご遺体から霊璽に移すための儀式となります。
霊璽とは仏教における位牌にあたるものです。
遷霊祭の間は室内の明かりを消し、暗闇の中で斎主が遷霊の詞を奏上します。 -
神道のお葬式の流れ : 葬場祭2日目の流れ神葬祭の2日目では葬場祭を行います。
仏式でいう葬儀・告別式にあたります。
手水の儀まずは通夜祭同様、手水の儀を行います。
葬儀社によっては省略する場合もあります。
その後、斎主が入場し、司会者によって開式の辞が述べられます。
ここから葬場祭が始まります。
修祓の儀(しゅばつのぎ)修祓の儀を行います。
斎主によって葬場祭の会場や棺、供物から参列者まで、すべてを祓い清める儀式です。
その間参列者は起立し、頭を下げてお祓いを受けます。
奉幣・献饌の儀(ほうへい・けんせんのぎ)神饌(しんせん)と幣帛(へいはく)を供えます。
神饌とは食べ物を指し、幣帛とは食べ物以外のお供え物を指します。
葬儀社によっては最初から供えられており、蓋を取ることでお供え物とする、という方法を取るところもあります。
誄詞奏上(るいしそうじょう)斎主が誄詞(るいし)といわれる祝詞(のりと)を奏上します。
誄詞とは故人の死を悼み、その生前の功績をたたえ、哀悼の意を表わす言葉です。
故人の死を悼み、崇め、遺された家族の守護神となることを祈ります。
斎主が奏上している間、参列者は起立し、頭を下げて故人の死を悼みます。
弔事・弔電誄詞奏上を終えると、参列者代表による弔辞が述べられます。
また、参列できなかった方から届いた弔電もこのとき読み上げられます。
玉串奉奠通夜祭同様、玉串奉奠を行います。
撤饌の儀(てっせんのぎ)奉幣・献饌の儀にて献上したお供え物を下げます。
あるいは最初から供えてあった場合、蓋をすることでお供え物を下げるとします。
その後、斎主が退場し、司会者が閉会の辞を述べたところで葬場祭は終了です。 -
神道のお葬式の流れ : 火葬祭~直会まで火葬祭葬場祭が終わると次は火葬祭を行います。
仏式における火葬のことです。
火葬祭では、神主が祭司を奏上します。
参列者は玉串を奉り、拝礼します。
埋葬祭火葬祭が終わると、ご遺骨を埋葬するために埋葬祭が執り行われます。
ご遺骨をお墓に納め、故人の名前などが記された旗や花を供えます。
ただし、必ずしもこのときに納骨しなければならないというわけではありません。
本来、神式は火葬後すぐにご遺骨を埋葬するのが一般的でした。
ですが近年では遺族の心の整理などの理由からご遺骨を一度自宅に持ち帰って祀り、五十日祭を目途に埋葬する傾向にあるようです。
このときお墓がない方なども、一年祭などを目途に埋葬します。
帰家祭自宅に戻った後、手水や塩で清めます。
死は穢れという概念から、穢れをはらうために塩を用いるようになりました。
仏式のお葬式が終わった後に家の周りに塩をまくという習慣も、もとは神式から始まった文化といえるでしょう。
その後、無事に神葬祭が終了したことを奉告します。
直会(なおらい)すべてが完了したら、神職や参列者などお世話になった人々を招き、直会の儀を行います。
仏式でいう精進落としにあたります。
直会の儀という宴は、神事という非日常の行事を行った後、これをもって日常に戻るという意味合いをもっています。
大まかな流れをご紹介しましたが、葬儀社によって異なる部分もあります。
あくまで参考として覚えておくと良いでしょう。
神葬祭における注意点
神葬祭において注意しなければならない点がいくつかあります。
仏教用語は使わない
神葬祭は神道のお葬式です。
仏教とは宗教が異なるため、仏教で用いる言葉を用いてはいけません。
ご冥福、香典、供養、浄土などは仏教用語です。
神葬祭では使わないようにしましょう。
また、蓮の花は仏教の花とされているため、神道では用いません。
数珠は使わない
数珠は仏教で用いる道具です。
神道のお葬式においては用いません。
喪服は仏式と同じでOK
喪服に関しては仏教における葬儀と同じで構いません。
黒色の喪服を着用します。
香典とは言わない
仏式のお葬式で渡される香典は、神式のお葬式では玉串料と呼ばれます。
熨斗袋(不祝儀袋)も仏教用とは異なりますので注意しましょう。
まとめ
神道におけるお葬式についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
難しい漢字や読み方をする言葉が多く、覚えるのは大変かもしれません。
仏式に比べ、参列する機会が少ない神式のお葬式ですが、いざ参列することになったとき戸惑うことがないよう、流れやマナーについて知っておくことが大切です。
特にお悔やみの言葉を述べる際、仏教用語を使わないよう注意しましょう。