お墓はなぜ必要なのか?その存在意義を考えてみた!
- 2019.08.6 | 知識
お墓はご先祖様に想いを馳せ、故人の冥福を祈り、自分自身を見つめ直すきっかけを得たりする場所です。
お墓参りを通してご先祖様や故人の存在を感じ、語りかける機会を持つことができます。
普段から家族や知人とお墓について話をしている方は少ないと思います。
ですが、核家族化が進んだ現代ではお墓は本当に必要なのか、疑問を抱いている方もいるのではないでしょうか。
近年では少子高齢化が問題となり、年々進行しています。
お墓の継承者がいなくなることによって墓じまいを考える人も少なくないのが現状です。
また、墓じまいを考えるのは配偶者や子供がいない方だけではありません。
お墓を継ぐ子供はいるけれど負担を掛けたくないと考えたり、子供が都会に住んでいて気軽には帰省できなかったり、それぞれ様々な事情や思いから、選択肢に入れる方がいらっしゃると思います。
納骨堂や永代供養墓・樹木葬のような新しい形で供養を行われる方も増えており、お墓を取り巻く事情は大きく変化をしています。
ご遺骨は必ずしもお墓に納骨しなければならないと決められているわけではありません。
樹木葬や海洋葬、宇宙葬などこれまでとは違う形態による供養が広まったのも、だからこそといえるでしょう。
今回は、お墓が持っている役割や必要性とはどの様なものなのかご紹介したいと思います。
このような時代だからこそ、お墓の大切さを知っていただくきっかけとなれば幸いです。
お墓って何?
お墓とは、一般的にご遺体やご遺骨を納めるための収蔵場所を指します。
ほとんどの方が墓地や霊園、お寺で『○○家之墓』と刻まれた石製のシンボルを見かけたことがあるのではないでしょうか。
県や地域によって風習や呼び名が異なりますが、基本的に墓石、納骨棺(カロート)、境界石、外柵等で構成されています。
かつては仏石(石塔)が縦に長い和型の墓石が一般的でしたが、現在では仏石が横に広い洋型や個性的なデザイン型など、見た目も多種多様になっています。
お墓の歴史
お墓を建てることは法的に義務つけられているわけではありません。
ですが、亡くなった人を埋葬するという考えは古代から脈々と受け継がれてきました。
かつては一部の上流階級の人だけが建てているものでした。
歴史上の偉人や戦国武将のお墓はよく聞くけれど、当時の平民たちのお墓の話はほとんどありません。
なぜならその時代、一般庶民の間ではお墓を建てるという習慣が存在しなかったからです。
一般庶民もお墓を建てるようになったのは江戸時代と言われています。
時代とともに変化していく供養の風習を、日本の歴史の流れとともにみていきましょう。
縄文時代~室町時代
旧くはすでに縄文時代において、亡くなった人を埋葬する習慣があったことがわかっています。
古代におけるお墓として有名なのが古墳でしょうか。
位の高い人が権力を誇示、承継する為に作らせた古墳時代を経て、仏教とともに火葬の風習が日本に伝わったとされています。
ここからお墓と仏教は結びつきが強くなります。
平安時代には仏教に基づく供養塔などが建てられるようになりました。
鎌倉時代のお墓は五輪塔が主流です。
当時の石工集団が作った石塔は、現在でも日本中の各地で見ることができます。
また、室町時代には位牌なども文化として伝わります。
江戸時代
徳川幕府によりお寺が地域住民を管理する制度を設けられ、寺と地域住民が密接に関係するようになります。
これを檀家制度といいます。
江戸時代に檀家制度が確立されたことで、一般庶民の間にも墓石を建てる習慣が徐々に広まっていきました。
貧しい庶民は大名のように立派なお墓を建てることはできないため、川原で拾ってきた石を積み立てることでお墓の代わりとしていました。
現在によく見る墓石の原型が出現するようになります。
この頃、都市部では墓地が足りなくなり、これまでの土葬から火葬にすることで少しでもご遺体を小さなご遺骨にすることで解消しようと考えられていました。
明治時代
1884年(明治17年)に初めてお墓に関する規制、「墓地及埋葬取締規則」が作られました。
墓地や埋葬に関し、治安維持・公衆衛生という面から規則化したものです。
ご遺骨やご遺体はお墓に埋葬するべき、という内容です。
今まではお墓といえばひとりひとりが入る個人のお墓が一般的でしたが、この年以降、家族が入る一家ごとのお墓が普遍化していくようになりました。
長男がお墓を継ぐものだと定まったのもこの頃です。
この規則は、昭和時代には廃止されています。
昭和以降~
1948年(昭和23年)、明治時代に定められた「墓地及埋葬取締規則」が廃止されました。
代わりに「墓地、埋葬等に関する法律」と「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」いう法律が制定されました。
ここから、次第に現代のお墓の姿へと整備されていきます。
過去からの経緯から見ることで、お墓は亡くなった人に対する敬意の現れであることが汲み取れます。
お墓とはつながる場所
お墓は先祖や故人を想い続け、いつまでもつながることができる場所として重要な意味を持っています。
私たちがいま在るのは両親のおかげで、その両親も祖父母たちがいたからこその存在です。
さらにはもっと多くのご先祖様がいるわけですが、その多くの命がつながってきた壮大な歴史のうえに私たちが生きていることを考えると感慨深いですよね。
脈々と命をつないでくれたご先祖様に感謝し、またつながっていることに気づくことができる場所こそがお墓といえるでしょう。
そして今いる家族とつながることができるということも忘れてはいけません。
お墓は家族にとって、共有した祈りと語らいの場です。
そういう場所があることで血の繋がりを認識できるでしょう。
ご先祖様から受け継いだ家族ということを改めて実感し、より絆を深めることができる場所。
それがまさにお墓と言えるのではないでしょうか。
普段は都市部に出て生活している方で、お正月やお盆に帰省し、お墓参りをされる方もいるでしょう。
お正月やお盆のほか、お彼岸の時期になると、たくさんの人々がお花やお線香を持って霊園や墓地、お寺を訪れる姿が見られます。
祖父母、父母、子、孫――。
世代を問わず、皆がお墓の前では手を合わせ、祈りを捧げたりご先祖様と語り合ったり、大切なひとときを過ごすのです。
久しぶりに親戚が集い、ともにご先祖様を供養する。
お墓は家族の絆を深める象徴として大きな役割を持っているといえるでしょう。
まとめ
お墓は故人を偲び、想い、ご先祖様に感謝し供養するためのものですが、その背景にある多くの命のつながりを認識する場所でもあります。
自分が存在していることも、そして成長することで新しい家族を築くことができるのも、多くの命が連鎖していることのおかげだといえるでしょう。
お墓は心の拠りどころとしての意味合いも持っています。
近況報告をしたり、抱える悩みを相談したり、目的をもってお墓を訪れる方もいることでしょう。
目まぐるしい日常のなかにでも、ときにはお墓参りで手を合わせ、いろんな想いを巡らせながら自分を振り返り心を養う。
そのようなひとときを与えてくれるのが、お墓という存在です。