墓地の種類には何がある?従来型から最新のお墓までそれぞれの特徴も解説
お墓を建てたいと考えていても、まずどの墓地を選んだらいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
少子化が進む近年において、お墓に関する選択肢が増えています。多岐にわたる選択肢から納得のいくお墓を建てるために、さまざまな側面から墓地やお墓の種類を知ることが大切です。
本記事では、運営主体・施設・埋葬方法ごとの墓地やお墓の種類などを解説します。お墓を建てるための一歩として役立ててください。
【運営主体別】墓地や霊園の種類4つ
お墓を建てるとき、まず墓地や霊園を探すことになります。希望にかなうお墓を建てるために、墓地や霊園の種類を把握することが重要です。
ここでは、墓地・霊園の4つの種類を紹介します。
• 公営霊園
• 民営霊園
• 寺院墓地
• みなし墓地
それぞれのメリット・デメリットを理解して、納得してお墓を建てることが大切です。
公営霊園
公営霊園とは、都道府県や市区町村などの地方公共団体が運営する霊園のことです。経営が安定しており、民営霊園や寺院墓地より管理費が安い傾向があります。しかし、立地やアクセスが良いと管理費や永代使用料が高くなりやすいです。事前に費用を確認しておきましょう。
また、宗派による制限がないものの、その地域住民しか利用できないといった利用制限が設けられているケースが一般的です。さらに、申込期限が定められており、抽選となることもあります。
民営霊園
民営霊園は、一般的には宗教法人が経営母体となり、その委託を受けた民間企業によって管理・運営されています。民間企業が運営しているため、サービスや設備が充実しているケースが多いです。また、企業によってはお墓や埋葬方法の選択肢が幅広い場合があります。宗派の制限はなく、基本的に抽選が行われることもありません。
デメリットは、公営霊園より管理費が高くなる傾向がある点です。さらに、公営霊園と同様に、霊園の立地やアクセスが良好だと管理費や永代使用料が高額になる可能性があります。
そして、注意しなければならないのが、石材店選びです。民営霊園の多くが、お墓の施工や管理を石材店に任せています。そのため、指定された石材店しか取り扱っていないケースがあります。民営霊園に決める場合は、指定石材店があるかどうか確認しましょう。
寺院墓地
仏教寺院が管理・運営しているのが、寺院墓地です。一般的には、寺院の境内や隣接された敷地内に墓地があります。寺院による格式高い供養を受けられる点が、寺院墓地を利用するメリットです。
一方で、公営霊園や民営霊園と比べて管理費以外にも、門徒条件などがある場合があります。寺院の檀家になることを条件として、お布施や入檀料などが発生することもあります。寺院墓地で仏教の本格的な供養を受けたい場合には墓地以外の費用を事前に確認しておきましょう。
寺院墓地においても、民営墓地と同様に指定石材店があるところがあります。寺院墓地の利用を検討する際は、指定石材店があるかの確認をすることもおすすめします。
みなし墓地
みなし墓地とは、昭和23年施工の「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」が制定される前に開設され、その後追認された墓地のことです。
みなし墓地には、以下の種類があります。
- • 個人墓地:自身、あるいは家族が所有する土地に先祖代々の遺骨を埋葬する
- • 集落墓地:ある一定範囲の地域に利用される
- • 共同墓地:宗教団体など同じ目的や信仰を持つコミュニティによって利用される
みなし墓地の場合、管理者の所在が分からないことがあります。
【施設別】墓地の種類は2つ
墓地の種類は、遺骨を納める施設の性質によっても異なります。
ここでは、以下2種類の墓地を紹介します。
• 埋蔵施設
• 収蔵施設
一般的な「埋蔵施設」
埋蔵施設は、遺骨を埋葬するごく一般的な墓地のことで、一般埋蔵施設・一般墓地とも表記されます。
埋蔵施設は、個別に埋葬する方式と、他の故人の遺骨をまとめて埋葬する合葬方式に大別できます。
長期収蔵を前提とした「収蔵施設」
収蔵施設は、建物の中でお参りができるタイプの墓地です。従来はお墓を建てるまでの一定期間、遺骨を保管するための施設として利用されていたもので、一般的に納骨堂ともいわれます。今日では、利用者が増加したことを背景に、長期的に遺骨を保管できる収蔵施設として利用されています。
一時保管を目的とする場合は永代供養できないことが多いですが、一定期間経過後、永代供養墓へと改装して永代供養してくれるケースもあります。
【供養方法別】従来のお墓から最新のものまで10の種類
家族の形態が多様化する中、お墓の種類においても選択肢が広がっています。それぞれの形態や故人への想いに合わせてお墓を建てるためには、種類ごとの特徴を理解しておくことが大切です。
ここでは、供養方法別にお墓の種類をご紹介します。
代々引き継がれる「家墓/塁代墓」
家墓・塁代墓とは、一族で代々継承していく伝統的なお墓のことです。一族が共同で使用するお墓で、「〇〇家の墓」「〇〇家先祖代々の墓」などと家名が刻まれます。またお墓の側面には、故人の戒名や法名が刻まれることが一般的です。
しかし近年、少子化や核家族化が進む中、家墓・塁代墓は減少傾向にあります。墓じまいをして、後述する「納骨堂」「散骨」などを検討する人が増えているようです。
別性の親族も埋葬する「両家墓」
両家墓とは、二つの家系の先祖代々のお墓を一つにまとめたお墓を指します。両家の墓石をまとめる場合や、一つの区画に両家のお墓を建てることが一般的です。
従来は長男がお墓を継ぐものとされていました。しかし、最近では長男が必ずしもお墓を継ぐとは限らず、継承者がいないケースも増えていることから、両家墓のニーズが高まっています。たとえば一人っ子どうしの結婚や、お墓を継承するはずの長男と長女が結婚する場合に、両家墓が選択されることが多いです。
一人だけで埋葬される「個人墓」
個人墓は、名前のとおり故人一人だけで埋葬されるお墓です。家墓と同じ区画に建てる場合と別の区画に建てる場合とがあります。
もともと、個人墓は歴史に名を残した武将や有名人のために建てられていました。しかし近年、お墓の継承に関して周囲に手間をかけたくない、継承者がいないといったケースが増加したことを背景に、選択される機会が増えています。
お墓のデザインや形状、刻む文字などを自由な発想のもと自分好みにできる点が特徴です。
他の人と一緒に埋葬される「共同墓」
血縁とは関係なく、大きな供養塔の内部に複数の故人の遺骨を一緒に埋葬するのが共同墓です。基本的には霊園や寺院が供養してくれる永代供養で、合祀墓・合葬墓とも呼ばれます。お墓を継承する親族や管理する家族がいない場合や、費用を抑えたい場合などに選択されます。
なお、樹木や草花などを墓標とすることが一般的な「樹木葬」では、骨壺ごと埋葬される場合、33回忌を目安に供養された後に合祀されることがあります。
共同墓(合祀墓・合葬墓)の注意点は、一度埋葬されると他のご遺骨と一緒に埋葬されることが一般的なため、後から取り出せなくなります。共同墓を希望する際は、霊園や墓地の規則を確認したうえで、家族ともよく話し合って決めましょう。
一族とは別に夫婦だけで埋葬する「夫婦墓」
夫婦墓とは、夫婦二人だけの遺骨が埋葬されるお墓のことで、「めおとばか」「ふうふばか」と呼ばれます。継承者がいなかったり、子供がいなかったりする場合に選択されることが多く、基本的には永代供養されます。
遺骨を埋葬せず収蔵する「納骨堂」
遺骨を埋葬せず、施設に収蔵して供養する場所を納骨堂といいます。従来は、お墓を建てるまでの期間、遺骨を納めておく保管場所として使用されていました。次第に、先に述べた「収蔵施設」として利用されることが増え、今では永代供養をしてくれる納骨堂もあります。
納骨堂には一般的に、以下の種類があります。
- • ロッカー式:個別に仕切られた棚の区画に骨壺を納める形式
- • マンション式:参拝ブースのセンサーにICカードをかざすと骨壺が自動的に運ばれてくる形式(自動搬送式納骨堂)
- • 棚式:区画に仕切りがなく、一つの棚に複数の骨壺が並べられる形式
- • 位牌式:位牌の下部にあるスペースに遺骨を納める形式
- • 仏壇式:施設内に仏壇型の供養スペースが設けられ、その内部に骨壺を納める形式
納骨堂は費用を抑えられる点が特徴で、都心部でもお墓を持てる可能性があります。また、遺骨の収蔵にスペースを必要としません。
なお、納骨堂には、「屋内型」と「屋外型」があり、屋内型の場合は、冷暖房が完備されていることが多い点が特徴です。建物内で供養できるため、快適な環境でお参りできます。
霊園や寺院が遺骨の管理をしてくれる「永代供養墓」
永代供養墓とは、遺族に代わり霊園や寺院が遺骨を供養してくれるお墓のことです。一般的に永代供養のサービスが付されたお墓を意味するため、たとえば前述した共同墓や夫婦墓、樹木葬、納骨堂も永代供養墓の一種といえます。
少子化が進み継承者が減少する近年において、注目を集めているお墓の形態です。
お骨を撒く「散骨」
近年少しずつ需要が増しているのが、海や山などに遺骨を撒く散骨です。すべての遺骨を撒く方法のほか、一部の遺骨を撒き残りをお墓に安置したり、手元供養にしたりする方法など、さまざまなパターンがあります。
散骨の一つ、海洋散骨には以下の3種類があります。
- • 委託散骨:業者に依頼して散骨してもらう(代行散骨とも呼ばれる)
- • 合同散骨:複数の遺族が同じ船に乗って散骨する
- • 個別散骨:船をチャーターして散骨する
費用面では、委託散骨がもっとも安く、個別散骨がもっとも高い傾向があります。散骨を選ぶ層が以前より増えてきているとはいえ、まだ少数派です。散骨の場合、遺骨は戻りません。遺族間で意見が分かれる場合、事前に十分な話し合いを行い、全員の合意を得ることが重要です。
自宅などで供養する「手元供養」
納骨せず、遺骨を自宅の仏壇や部屋などに安置して供養することを手元供養といいます。故人をいつも身近に感じていたい場合に選択される供養方法の一つです。
一部を粉骨化してアクセサリーとして身に付ける方もいます。アクセサリーの材質を金やプラチナにする場合の費用相場は、10万~60万円ほどです。予算との兼ね合いを考慮して、供養の選択肢として検討しましょう。
なお、手元供養には継承者が必要です。そのため、手元供養されていた人が亡くなった場合、法律上、遺骨を勝手に処分できません。また、埋葬許可証がないと改葬できなくなる点にも注意しましょう。
ペットを弔う「ペット供養」
ペットが亡くなった際、人を弔うのと同じように供養するのがペット供養です。ペット供養には定義はなく、一般的に火葬したペットの遺骨を納めてお見送りすること全般を指します。
ペット供養には主に以下の方法があります。
• 自宅の庭にペットの遺骨を埋める
• ペット霊園に埋葬する
• 手元供養
• 散骨
ペットの遺骨を自宅の庭などに埋葬する方法は、費用がかからない反面、引越しの際に掘り返すなどの対応が必要です。
ペット霊園に埋葬する場合は、一般的に永代供養がつきます。また、霊園や墓園に供養してもらえる点が利点です。
手元供養は、自宅などペットとともに暮していた環境で毎日供養できます。ペットを身近に感じられるでしょう。ただし、自身が亡くなった際に、ペットの遺骨をどうしてほしいのか、遺言を残しておくことが重要です。
散骨の場合は、遺骨は戻りません。事前に家族などに相談しておく必要があります。
お墓の形には4つの種類がある
墓地の種類を理解したら、墓石についても把握しておくことが重要です。
なお、前述のとおり、とくに民営霊園や寺院墓地の利用を検討する際は、石材店が指定されていることがあります。さらに、墓石の形にも制限が付されていることもあるため、事前に確認しましょう。
ここでは、4種類のお墓の形について解説します。
• 和型墓石
• 洋型墓石
• 和洋型墓石
• デザイン墓石
和型墓石
和型墓石は日本の伝統的な縦長の形が特徴的なお墓のことです。江戸時代に一般化されたお墓といわれています。和型墓石の中では、「天」「人」「地」を表す「和型三段墓」が基本の形です。
和型墓石は大きく以下のパーツから構成されています。
• 下台/芝台
• 中台/台石
• 上台
• 竿石(または仏石)
下台は、お墓の高さを出すために使われ、お墓の土台となるものです。設置が必須ではありません。中台は、下台の上にのせる石材で、家紋などの彫刻がされることが一般的です。「天」「人」「地」の「地」にあたるパーツで、財産維持を表します。
上台は下台や中台の上にのせる石材で、メインの竿石を支えています。「人」にあたり、人望や出世を意味します。
そして、竿石は、お墓のメインにあたり、「〇〇家の墓」などと彫刻されていることが多い部分です。「天」にあたる部分で家庭円満を意味します。
なお、同じ和型墓石でも、加工方法や付属品を付けることでお墓の印象は変わります。石材店へ相談したうえで、希望に合うお墓を建てましょう。
洋型墓石
洋型墓石は、墓標が横長の西洋風のデザインが特徴的な墓石です。前述の和型墓石と比べてお墓の高さが低いため、圧迫感を解消でき安定感があります。モダンな雰囲気でありながら格調高いデザインであり、人気が高まっています。また、その形状からお墓の重心が低く、地震に強い点も需要が増えている理由です。
洋型墓石のメインとなる「竿石」に刻む文字には、キリスト教の場合はある程度のパターンがあるものの、基本的には彫刻する文字に決まりはありません。
竿石の下には、和型墓石の下台より平べったい形状の下台があるのが一般的です。そして、下台の上には花立や水鉢が置かれ、墓石の前面には参拝に来た人が足をのせる拝石があります。
和洋型墓石
和洋型墓石は、伝統的な和型墓石の格式高いデザインをベースとして、ところどころに洋型墓石の要素を含めたデザインが特徴です。このように、和洋折衷でオリジナル性の高いデザインにできることから、近年人気を集めています。
デザイン墓石
デザイン墓石は、まったくのオリジナルの墓石を設計できる点が特徴です。墓標には、故人が好きなものを模したデザインにしたり、メッセージなどを彫刻したりできます。ただし、デザイン墓石を禁止している墓地もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
お墓を建てるまでの流れ
霊園や墓地を決めるところからお墓を建てるまでの流れを押さえておくことで、慌てずに準備できます。
1. 石材店または霊園・墓地を探す
・霊園・墓地を直接探すか、石材店に相談し紹介してもらう
・公営墓地の場合は、役所に相談する(抽選の場合がある)
2. 霊園・墓地の費用や規約を確認する
・管理費や利用規約を確認する
・公営墓地の場合は自治体に確認する
3. 見積もりを取得する
・霊園に直接問い合わせる場合:墓地代・管理費・永代供養費などを確認する
・石材店に問い合わせる場合:墓石代・施工費を確認する(霊園を紹介してもらう場合は墓地代や管理費も含めて確認)
4. 霊園・墓地と契約を結び、石材店と墓石の打ち合わせを始める
・墓地の契約手続きを進め、使用権を取得する
・石材店と相談し、墓石のデザインや石種を決める準備を進める
5.墓石のデザインや彫刻を決める
・規格墓でない場合、お墓のデザインを決める(サイズ、石種などを相談する)
・お墓に刻む文字・彫刻を決める
・施工費を含めた最終見積もりを確認する
6. お墓の建立工事を行う
多くのケースで、墓石を注文してからお墓が建つまでの期間は約2~3ヵ月ほどかかります。
天候や工事の進行状況によっては、さらに時間がかかる場合もあるため、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
まとめ
本記事では、墓地やお墓の種類、お墓のデザインなどについて解説してきました。家族形態の多様化や継承者の減少、少子化などを背景として、近年ではさまざまな故人に対する弔い方があります。
数ある選択肢の中から墓地を選定し、納得してお墓を建てるためには、墓地やお墓の種類ごとのメリット・デメリットを理解することが重要です。本記事で紹介したように、運営主体や施設、埋葬方法といったさまざまな側面から墓地やお墓の特徴を捉えることでより納得してお墓を建てられるでしょう。
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